ストーカー被害に遭ってしまった時、まず考えるのが警察や弁護士への相談かもしれません。昨今では、ストーカーが対象者に暴力を振るったり、家の中で待ち伏せしていたりといった事件も多発しています。そのため、ストーカー被害に遭ってしまったら、できるだけ早いうちに解決したいと思うのは当然のことです。

しかし、時には「警察が何もしてくれない」と感じることも。今回は、ストーカー被害に遭ってしまったときに弁護士がどんな対策をしてくれるのか、弁護士費用はいくらかかるのかなど、弁護士に特化して解説します。

ストーカー被害について、弁護士は何をしてくれる?

ストーカーに遭ったとき、警察に相談に行くのは基本ですが、警察に相談に行ってもなかなか対応してくれないこともあります(なぜ対応してくれないかについては、警察にストーカーの相談をしたら本当に助けてくれるのか?対応を解説で詳しく解説しています)そんな時に次に思い浮かぶのが「弁護士」という存在ではないでしょうか。

しかし、弁護士はストーカー被害に対して何をしてくれるのでしょうか?それは大きく分けて4つです。

1.内容証明を出す

元恋人や元配偶者が、別れ話のもつれからストーカー化することがあります。もともと恋愛感情があっただけに、それが歪んでしまうと憎しみが大きくなってしまうことは想像に難くありません。

そこで、直接ストーカー行為をやめてもらうように訴えることもできますが、当事者同士で話をしてもなかなか効果がなかったり、そんなにひどいことをしているという認識が、そもそもない場合もあります。そんな時に有効なのが内容証明です。

内容証明とは

何かトラブルが起きた時には、「内容証明」という単語をよく耳にするかもしれません。内容証明というのは、郵便局で使われる名称で、何か特定の内容の手紙を意味するものではありません。簡単に説明すると、内容証明とは「誰がどんな内容の文書を作成して誰に送ったのかということを証明する」制度のことです。

作成した文書は、送り主と受け取り人、それから郵便局で保管されます。トラブルになって、文書でやり取りをする場合、「受け取った」「受け取っていない」で揉めることは少なくありません。内容証明の制度を使って郵便物を送り、同じものを郵便局でも保管することによって、「こんな内容の文書を作成した」「この人宛に送った」ということが担保されるという仕組みです。

ストーカーに対する内容証明

ストーカー対策としての内容証明は、基本的に「ストーカー行為をやめてほしい」「やめなければ法的措置も検討する」といったような内容の手紙を送るのが一般的です。普通郵便ではなく、「内容証明」という郵便が自分に届くことによって、ストーカーをしているという意識がない加害者も「このままでは警察に捕まるかも」と認識を改める可能性があります。

また、被害者が本気で困っているということを内容証明で伝えることによって、相手のストーカー行為を抑制する効果が期待されます。

弁護士が内容証明を出す意義

内容証明は、誰でも作成して送ることが可能です。だとすれば、弁護士に依頼する必要はないのではとも思えます。しかし、差出人として弁護士の名が連なっていることが相手に与えるインパクトはかなり大きいものです。仮に、自分に弁護士名義で内容証明郵便が届いた時のことをイメージするとわかりやすいかもしれません。

個人名で警告文が届いたら「放っておけばいい」と思われてしまうものでも、それが弁護士からのものとなると「放置すると大変なことになる」と思ってしまいますよね。まさにこの点が、弁護士が内容証明を送る意義と言えるでしょう。

2.警察に同行する

ストーカー被害に遭ってしまったら、警察に相談してパトロールを強化してもらったり、被害がひどい場合には犯人を逮捕してもらいたいと考える人もいるでしょう。そのときには被害者側が警察に出向き、警察官に対して被害状況や自分の希望について話をします。

しかし時には警察が介入できる事案ではないとして、対応が期待できないこともあります。その詳しい理由については別の記事で書いているので参考にしてください。警察の判断通り、単なる個人的な痴話喧嘩などをストーカーだと主張しているようなケースであれば、警察の対応がなくても問題はないでしょう。

しかし、ほんとうに被害に遭って苦しんでいるのに、うまく説明できずに「まだ大丈夫」と判断されてしまってはたまったものではありません。そこで弁護士の出番です。弁護士は、被害者に付き添ったり、または弁護士単独で警察に出向き、ストーカーの被害状況について警察と話をすることができます。

これは、弁護士が依頼人の代理人として動けるからです。警察側としても、弁護士が間に入っていることにより、被害者の真剣度や被害の重大さを測ることができます。また、冷静な第三者がいることで、より事態の把握がスムーズにいく効果も期待できます。

3.加害者と代理交渉する

弁護士は、依頼人の代理人になれます。これは対警察だけではなく、加害者に対しても同じです。依頼人の多くは、ストーカーをやめさせるためで遭っても、直接ストーカー本人と話しをすることを拒絶します。直接会うことは恐怖ですし、不快感も募っているでしょう。

弁護士に依頼していれば、加害者とのやりとりを自分で行う必要がありません。自分が希望することを伝え、弁護士とやりとりをしておけば良いのです。

4.民事訴訟を起こす

ストーカーによって精神的苦痛を受け、カウンセリングを受けていたり、会社を続けられなくなったなど、ストーカーによる被害にはさまざまなものがあります。物理的・精神的に損害を被ったとき、ストーカーに対して慰謝料や損害賠償を請求したいと考えるのは当然のことです。

慰謝料や損害賠償を請求して、ストーカーがおとなしく支払ってくれればよいでしょう。しかし、そこでおとなしく支払ってくれるような人ならば、そもそもストーカーにはなっていないかもしれません。多くの場合相手は慰謝料などの請求には応じないため、最終手段として訴訟という方法に出なければならなくなります。

訴訟になったときには、法の専門家である弁護士の存在はかなり大きいと言えるでしょう。

ストーカーに関する弁護士費用の相場

弁護士に依頼することのメリットを解説しました。ここで気になるのが費用面ではないでしょうか。「そりゃあ頼めるなら弁護士を頼んだ方がいいことは自分だってわかっている」、そう思っている人も多いかもしれません。弁護士費用は事案や依頼内容によって変わりますが、相場としてはこのようになっています。

弁護士費用の基本的な考え方は【着手金+成功報酬+実費】

弁護士費用が外から見えにくいことの理由の一つが、その報酬スタイルにあります。単なる相談で終わる場合には、相談料だけを支払えばよいため、事前にある程度の費用はわかります。しかし、訴訟や慰謝料請求などになってくると、その案件で依頼者がどれだけの経済的な利益を得たかによって、弁護士への報酬が変わる「成功報酬」というスタイルに変わります。

さらに、出張が必要になった場合は日当が、調査などで費用を立て替えた場合はその費用分が上乗せで請求されるため、あらかじめ「おおまかにこれくらいかかる」という予算が見えにくいのです。それに加え、過去は報酬額が一律と定まっていましたが、弁護士報酬が自由化されたため、弁護士事務所によって報酬額が異なることも理由に挙げられるでしょう。

しかし、それでもストーカー事案の弁護士費用についてはある程度の相場があります。

内容証明

弁護士の名前で内容証明を出してもらう場合は、5万円前後となっています。ただ、内容証明の依頼内容はそれぞれで、「自分で出すから、弁護士には法的におかしくないかのアドバイスだけもらいたい」というケースもあれば、全てを弁護士に一任したい人もいます。

費用を安く抑えたい場合や、さほど被害が大きくない場合などには、法的なアドバイスに止めるという方法もあります。

代理交渉

弁護士に間に入ってもらい、代理人として正式にストーカーとの交渉を依頼する場合は、内容証明だけを依頼するよりも費用が高くなります。この場合の相場は20万円前後となっています。相手がごねて交渉が長引くような場合には、さらに費用がかかることもありますので、事前にある程度の費用感は確認しておくと安心です。

民事訴訟

民事訴訟の場合は、一般的に成功報酬によって左右されます。慰謝料や損害賠償をどれくらい取れるかによって、弁護士に支払う費用は変わってきます。過去には弁護士などの士業は報酬額が一律と定まっていましたが、報酬規定が自由化されたため、弁護士事務所によって価格が異なります。

ただ、過去の報酬規定をベースに定めている法律事務所も多くありますので、報酬規定でおおよその相場は確認することができるでしょう。

参考サイト:(旧)日本弁護士連合会報酬等基準

弁護士が対策を取るのが難しいケースがある

ストーカーの被害については、警察がなかなか動いてくれないので弁護士に相談に来たというケースもありますが、弁護士をもってしても対応が難しい場合もあります。弁護士に相談する前に、こういったケースに当てはまらないかどうかはチェックしておくと安心です。

加害者が不明

そもそも、ストーカーの加害者が誰なのかがわからない状態では、その相手に対して内容証明を送ったり、示談交渉などを行ったりすることもできません。弁護士には警察と違って捜査権などもないため、加害者を割り出すことは難しいものです。

もしも加害者が不明な状態なら、まずは加害者が誰なのかを突き止めることが先決です。そのためには、探偵に依頼したりといった対応が必要となります。よほどの被害が起きている場合であれば、警察が捜査に乗り出してくれる可能性もありますが、一般的にあまり期待はできないのが現状です。

ストーカー被害の証拠がない

ストーカーをされているという証拠がなく、本当にストーカー被害にあっているかがわからない場合も、弁護士としては対応が難しい事案です。状況がわからなければ、ストーカーがそもそも存在しているのか、単なる痴話喧嘩なのではないかといったことが判断できないからです。単に相談に来た人の捏造である可能性もあります。

被害者の目的が曖昧

実際にストーカーの被害にあっていたことが証拠などから客観的に明らかであったとしても、相談者がどうしたいのかがわからなければ、弁護士としては動きようがありません。ストーカー行為をやめさせたいのか、慰謝料を請求したいのか、有罪になって罪を償ってほしいのか…

相談の時点で明確になっている必要はありませんが、ある程度の方向性は決めておくとスムーズです。

弁護士業務以外のことで相談できる窓口

ストーカーからの被害は陰湿で、時に過激になることもあります。被害を受けている側からすれば「いつ何をされるかわからない」という恐怖もあるのではないでしょうか。今は自分の好意だけを伝えてきていても、それがいつ憎しみに転化するのかはわかりません。

しかし、先ほど解説したように、弁護士に相談する前に準備しておくべきことがある場合や、弁護士ではカバーできないところを相談できる相手がほしいと考えることもあるでしょう。ケース別の相談窓口や対応窓口を簡単にまとめました。

弁護士に依頼するのが経済的に苦しい:法テラス

弁護士に依頼したいけど、経済的に厳しくて二の足を踏む、ということもあります。そのときに利用したいのが法テラスです。法テラスでは、法律相談は無料となっているほか、弁護士に代理交渉や訴訟を依頼するとなった場合には、その費用を立て替えてくれるサービスもあります。費用面で不安を抱えている場合は、法テラスに問い合わせてみることをお勧めします。

参考サイト:法テラス

加害者がわからないので突き止めたい:探偵

先ほども触れましたが、そもそも加害者自体がわからない場合、警察も弁護士もなかなか対応してくれないことがあります。警察は捜査権を持っているため、加害者がわからなかったとしても捜査権を駆使して身元を突き止めてくれそうなものです。

しかし、警察には日々数多くの事案が寄せられていますので、実際にはなかなか対応してもらうことが難しいのが現状です。そういった時に頼れるのが探偵です。探偵に依頼するとなると確かに費用はかかりますが、まずは相談して見積もりを出してもらうということもできます。

心に負った傷を相談したい:カウンセラー・心療内科

ストーカー被害は深刻です。じわじわと私生活の奥深くにまで入り込み、生活の平穏を蝕んでいきます。加害者が逮捕されたり、示談がまとまったりすることで被害がなくなっても、ふと1人になった時に強い恐怖心に襲われたり、パニックになったりするPTSDを発症してしまうことも少なくありません。

また、外に出ることができない、鬱っぽくなったなど、心理的にダメージを受け続けることもあります。そういった心のダメージは、ゆっくりでもいいので回復に向けてなんらかの対策を取りましょう。被害にあう前のように普通に社会生活を送れるような状態に戻したいものです。そのためには、心療内科やカウンセラーなどのサポートを受けることも有効です。

ストーカーに遭っていると感じたら、まずは弁護士に相談を

ストーカー被害に弁護士がどのような対応を取ることができるのか、また費用はどれくらいなのかということについて解説していきました。ストーカーに遭ってしまったら、まずは警察に相談しようと思う人が多いものですが、事案によっては警察が対応してくれないということも。

そんな時にも、弁護士は頼れる存在です。ストーカー被害に遭った場合は、早急に弁護士に相談してください。