職場は、多様な人と毎日の時間を共に過ごす場所です。限られた組織内では、さまざまな人間関係のトラブルが発生します。誰でも被害にあう可能性があるのが、職場内でのストーカーです。交際を断った相手が必要以上に接触してくる、別れた相手から嫌がらせをされるなど、恋愛のもつれからストーカー行為へ発展するケースが多くあります。

恋愛が原因だと、周りの人に相談しても、「気にしすぎなのでは」と危険性を感じてもらえないことがあります。自意識過剰かもしれない、気のせいだと自分に言い聞かせ、誰にも相談することなく我慢してしまいます。ところが、我慢をするだけではストーカー被害の解決にはなりません。

さらにエスカレートした行為に発展する危険性があります。ストーカー行為をする相手は、どうしてもあなたの気を引きたい。あなたを自分のものにしたいという一心でどんな手でも使ってくるのです。取り返しのつかない被害に発展する前に、ストーカーへの対策を考えてみましょう。

職場でストーカーにあうと、具体的にどんな被害を受けることが考えられるのか、解決するにはどのような対策が必要なのか解説していきます。

職場のストーカー行為で受ける被害事例とは

職場では特定の人と長時間、関わり合います。人との距離が近いため、この行為はストーカー被害にあたるのか、自意識過剰なのかと判断がつかないことがあります。周りから見ても、仕事の一環としての行動として捉えられ、ストーカー行為に気づかれないのです。そんな職場で起こるストーカー被害とは、どのような事例があるのでしょうか。

なんとなく視線を感じる

いつも特定の人に見られている気がする。視線を感じた相手を見ると、すぐに視線をそらされる。こういうことが毎日続いている気がするなら要注意です。相手に監視されているかもしれません。最初の段階として気がつく人が多いようです。

些細な行為ですが、毎日監視されることは不安と恐怖が伴い、精神的な苦痛が次第に大きくなってきます。周りからは、業務の範囲内の目配りとしてとらえられ気づかれません。監視されている間に、あなたの個人的な情報を知られることも考えられます。

その情報をもとに、ストーカー行為がエスカレートしてくる危険性があるため、見過ごしてはいけない行為だといえます。

気がつくといつも近くにいて、会話に聞き耳を立てられている

職場での何気ない会話を盗み聞きされているかもしれません。職場では親しい同僚とプライベートな話をすることもありますよね。その会話を聞かれるとしたら。休日の予定や、趣味、嗜好。知られたくないプライバシーまで知られている可能性があります。

休日の出かけた先で待ち伏せをされる、プレゼントを異常に贈られるようになるといった行為に発展していくことも考えられます。

連絡先を教えた覚えのない人から、電話やメールが頻繁に来る

職場では特に、同じ社員の連絡先は簡単に把握することができます。そのため、親しくもない人から電話やメールが頻繁に来ることがあります。「何かの間違いだろう」とそのまま過ごしている内に、交友関係や恋人の存在など、極めて個人的な情報まで知られるかもしれません。

待ち伏せや、つきまといなどの行為へ発展していくだけではなく、嫌がらせなどの行為に繋がる可能性もあります。職場でのストーカーは個人情報を知られやすいことを知った上で、早めの対策が必要です。

退社後に会社の出口で待ち伏せをされる、家までつきまとわれる

その日の業務状況によって、残業する日もあれば早く帰れる日もあるでしょう。変動のある帰宅時間を把握されているかもしれません。同じ職場の人であれば、出口で人を待っていても怪しいと思う人はいません。自宅を特定されると、自宅で待ち伏せをされるようになる危険があります。

気がつくといつも同じエレベーターに乗っている

同じ職場である以上、相手が近くにいることは不自然ではありません。必要以上の接触も、ただの偶然かもしれないと見過ごしてしまいがちです。周りから見ても、偶然が重なっただけだろうと怪しい行為だと思われません。意図的に偶然を装いながら、接触を図ろうとします。不快だと感じるなら、それは異常な行為なのです。二人きりにはならないように注意しましょう。

職場のストーカーがなぜ危険なのか

ほかのストーカーと比べると、一日の大半を過ごす場所で起こるのが職場でのストーカーです。そこでストーカー被害にあうと、どんな危険があると考えられるでしょうか。

個人情報を抜かれやすい

個人情報は、外部への漏洩に比べると内部から手に入れる方が容易だと考えられます。例えば、ストーカー行為をする人が上司や人事を任されている人だったら。誰も個人情報を抜き出すことを疑わないでしょう。履歴書などから、容易に電話番号や住所を知られてしまいます。

理由を作り人から聞きだすことも可能です。ほかと比べると個人情報を知るための方法が多く、容易だということが危険だといえます。

勤務状況などからスケジュールを把握されやすい

同じ職場で働いていれば出勤時間や、退社時間、休日などをすぐに知ることができます。同僚との会話の内容から、休日をどのように過ごしているのか把握することもできます。その結果、帰宅時間に合わせて待ち伏せをする、休日の出かけた先にも現れるといった被害にあうことが考えられます。

ほかのストーカーと違い、生活に密着した情報を把握されることが考えられます。

接触されやすい

相手は同じ職場の人間という立場があります。必要以上に接触してきても周りからは不自然に見えません。ストーカーが上司だとしたら、相手の反応を恐れてやめてほしいと言うこともできないかもしれません。相手は職場環境や立場を利用して、意図的に接触を図ろうとしてくるのです。

次第にもっと接触をはかりたい、と相手の気持ちがエスカレートする恐れがあります。目の前に現れると身の危険を感じるでしょう。職場内であっても、一人で行動することは避けるなど注意しましょう。

仕事を辞めるだけでは解決しないことも

仕事を辞めたとしても、相手は個人情報などを知っています。職場内でのストーカー行為に悩まされることは無くなりますが、つきまといや待ち伏せ、無言電話やメールなどは続くことが考えられます。引っ越したとしても、何らかの方法で住所が知られるかもしれない、また被害にあったらどうしようと、不安な毎日は続くのです。

生活に密着した情報を把握される職場でのストーカーは、逃げるだけで解決することは難しいと考えられます。

職場のストーカー被害の対策法

職場でのストーカー被害は、周りに怪しまれることなくエスカレートしていく危険があります。相手の行為が不快だと感じるのなら、我慢する必要はありません。取り返しのつかない事態へ発展する前に、解決するためにはどうすればいいのでしょうか。

できるだけ接触を減らす

相手にやめてほしいと注意をしても、あなたと喋ることができたと逆に喜ぶ場合もあります。対策方法で大切なのは刺激しすぎないことです。できるだけ接触を減らしましょう。あからさまに避けたり無視をしたりすることは、一方的に拒否されたと捉えられ、逆にストーカー行為をエスカレートさせることがあります。

相手の気持ちを逆なでしないように、注意が必要だといえます。相手はあなたの気を引きたいと思っています。あなたは相手を嫌いになるのではなく、無関心でいることが、相手にはダメージが大きいのです。

会社でストーカーされているという証拠を集める

送られてきたメールや、着信履歴、手紙などは保管しておきましょう。警察へ被害を申し出るときに証拠となります。監視や接触、つきまとわれる被害だけのため、証拠がない場合もあります。そういう場合はメモを書いて残しましょう。

いつ、どのような行動から、どのように思ったか、自分の気にしすぎでは無いこと、相手のストーカー行為を証明できるものを残す必要があります。ストーカーの対策について、詳しくは「ストーカー被害に遭ったら必ずすべき8つの対策としてはならないこと」にて解説していますので、参考にしてください。

会社や上司に相談する

事業主(会社・雇い主)は、ストーカーに対して適切な措置をすることが義務づけられています。

引用:事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置に ついての指針(平成 18 年厚生労働省告示第 615 号)

事業主は、職場におけるセクシュアルハラスメントに係る相談の申出があった 場合において、その事案に係る事実関係の迅速かつ正確な確認及び適正な対処と して、次の措置を講じなければならない。”

“職場におけるセクシュアルハラスメントに 係る性的な言動の行為者とされる者(以下「行為者」という。)の双方から 事実関係を確認すること。 また、相談者と行為者との間で事実関係に関する主張に不一致があり、事 実の確認が十分にできないと認められる場合には、第三者からも事実関係を 聴取する等の措置を講ずること。 ② 事実関係を迅速かつ正確に確認しようとしたが、確認が困難な場合などに おいて、法第 18 条に基づく調停の申請を行うことその他中立な第三者機関 に紛争処理を委ねること。 ロ イにより、職場におけるセクシュアルハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、速やかに被害を受けた労働者(以下「被害者」という。) に対する配慮のための措置を適正に行うこと。”

前述したように、事業主(会社・雇い主)はストーカーに対して「事実関係を正確にかつ迅速に確認すること」が義務づけられています。会社は、あなたを守ってくれます。まずは上司に相談してみましょう。ストーカーが上司だった場合は、そのまた上司に相談するのが良いでしょう。

しかし、相手は注意を聞き入れる人ではない場合があります。何度、厳重注意をされても平然とストーカー行為を繰り返すこともあるのです。上司へ相談したことによって、相手は一方的に拒絶されたと感じ、ストーカー行為がエスカレートする可能性もあります。

会社からの注意を受けた結果、相手が辞めることになるかもしれません。相手は個人情報を知っています。相手が辞めるだけでは解決にならず危険がつきまとうことになります。会社に相談することで適切な対処があっても、罪の意識が薄い相手であれば、ストーカー行為を繰り返してきます。解決にはいたらず一時的なもので終わってしまう場合があります。

警察に相談する(被害届を出す・相談センターに電話相談など)

警察は犯罪行為を取り締まる機関であり、機動力はとても頼りになります。ストーカー行為をしている相手に「やめなさい」と警告でき、さらに「禁止令」を行うことができるのも、警察ならではといえます。また、悪質なストーカー行為に対しては、2年以下の懲役または200万円以下の罰則が科されます。

こういった抑止力を持つのも警察だからです。ただ、証拠が不十分な場合には、緊急性を感じてもらえず動いてくれない場合もあります。説得力のあるストーカー被害を主張すること、明確な証拠を提示することが必要なのです。

警察への相談に関しては、「警察にストーカーの相談をしたら本当に助けてくれるのか?対応を解説」にも詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

弁護士に相談する

弁護士は、具体的な対策法を提示してくれます。どんな状況であれば警察は動いてくれるのか、どういう証拠を提示すれば、実際にストーカー被害にあっていることを主張できるか、ということを熟知しています。弁護士費用がかかるという面がありますが、相手に会わずに示談交渉ができ、冷静な話し合いを持つことができます。

職場でストーカー被害に遭ったら早めの対策を

職場でのストーカー行為は、気のせいだと自分の判断で我慢をし続けても収まるものではありません。相手の近くで過ごす時間が長いことで、エスカレートしやすい面があるからです。相手が好意を抱いている場合、あらゆる手段を使い接触しようとしてきます。

会社へ相談しても、注意喚起をするだけではストーカー行為は収まらないケースがあります。それは、相手の物差しが一般と違うからです。何を言われても平然とストーカー行為を繰り返すことがあります。一人で抱えこまず大きな事態に発展する前に、警察や弁護士の専門機関へ相談し、アドバイスをもらいましょう。

場合によっては、実際に動いてくれることもあります。警察は公的な立場から、相手に警告を行ったり、逮捕をしたりととても頼りになる存在ですが、なかなか動いてくれないことがあります。その間に事態がエスカレートすることもあるため、具体的な処置をしてくれる弁護士に相談することをお勧めします。